右の図は、下記の資料より引用した秩父札所十番万松山大慈寺の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記《(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者吊:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,朊部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記《の下部の「霊場の縁起《については、次のような逸話が
記述されています。
攝州の儒士
當所に、攝州より来たりし儒者の住みけるが、因果応報をしらず、たゞ佛道を罵り、僧を賊のごとくに
辱しめけるに、或時、この本尊老僧となりて彼が家におもむき、談話に及びければ儒士大いに悦んで、
佛法をさんざんに排し、普門品の偈に羅刹鬼國の文あるがそは何れにあるや、是皆偶言なれば更に益
なしと讒しければ、僧笑って曰く。吾が佛教の深理、汝等ごとき腐儒のしるところにあらずと答へければ、
居丈高になりて、満面朱のごとくにして鍔元をくつろげ、汝無法の入道サアらせつきこくは何れにあるや
疾見せよ。見せずば虚言なりと既にうちかからんとするとき、手先を如意にてたたき給ひ、それ汝が問
らせつきこくは、則汝がその忿怒のさまをいうなりと笑って失ぬ。儒士たちまち此一言にてさとり、
僧を拜せんとすれども見へず、これによって此堂の傍に家を転じて、佛道を信じければ、その後霊験
を蒙りたるとなり。
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