ホーム   秩父銘仙   秩父札所   秩父の神社 
ホーム秩父札所 > 札所11番 南石山 常楽寺
札所11番 南石山 常楽寺

所在地
住所:埼玉県秩父市熊木43−28

観音霊験記
 右の図は、下記の資料より引用した秩父札所十一番南石山常楽寺の霊験記の錦絵です。 上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記」(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
 著者名:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,服部応賀/編
 出版者:〔山田屋庄次郎〕
 出版年:江戸末期

 右の図の「観音霊験記」の下部の「霊場の縁起」については、次のような逸話が 記述されています。
住持門海
門海は智徳勝れたる聖にて、當山に二王門を建立せしけるが、普請なかばに邪気に犯されて臥けるが、 薬服もはかばかしく験もなければ、本尊に快気を祈念しけるが、その夜夢中に貴僧来りて、吾よく汝 が邪気を治さしめんと宣へば、ふしぎと其座へ金剛神あらわれ出て、門海の手を採て引き立つると 思へば夢覚めぬ。その翌日より忽ち平愈しければ本尊をいよいよ信心しけるに、猶数多の霊験を蒙り、 長寿を得たること、偏に當寺の利益ふしぎというもおろかなり。


秩父三十四所觀音霊験圓通傳
 秩父札所の縁起については、江戸時代の延享元年(1744年)に発行された、沙門圓宗の「秩父三十四所観音霊験圓通傳」が 最も詳しい資料でしょう。慈眼寺から同書の復刻版 「秩父三十四所観音霊験円通伝」 (柴原保教 1976年) が発行されています。また、同書の翻刻版が「埼玉叢書 第三巻」(国書刊行会 昭和45年) と 「建部綾足全集 第6巻」(国書刊行会 昭和61年) にそれぞれ収録されています。 それには、常樂寺について、以下のような縁起が記されています(以下、翻刻版より一部抜粋、ひらがな表記に変更して引用)。
第十一番 南石山常樂寺(御堂三間四面南向)
本尊十一面觀音 立像御長三尺一寸五分 行基菩薩御作
當寺は行基菩薩諸國を巡り給ひ、州郡を定め道を造り梁を掛け、國毎に國分寺を建給ふ折から、此地に 至て其寂寥たる風景を愛し、艸盧を結て經歴の労を休給ふ。或夕暮、四隣寂々たる山中晝だに事問人も 無に、異口同音の讀經の聲松吹風に響あいて、清く妙なる事たとふるに物なし。不思議に思給いて窓押開 き見給ふに、遙成岑の峩々たる巌の上に、十一面の聖容巍然として立給ひ、餘多の天童前後に圍繞して 大乗を讀誦し給ふ。行基感嘆の餘り聖容を拜して、早卒に寫して刻て、檀をもふけて安置したまへば、聖 容大光明を放ち、彫刻の像を照し給ひ、影向の尊體は化天童子とともに香花を雨て忽ち光明蔵裡に入て跡 もなければ、行基遙に御跡を禮し、此彫刻の尊體を永く此山に止て觀音霊蹟とし、末世の衆生に結縁せ しめんと、則小堂を建て安置し給ふ。彼影向の巌今現に當山の絶頂に有。當寺現住より四代以前の住職 門海師は、智徳秀たる聖にておわせしが、當山に二王門を建立せんと思寄て、普請なかばならずして風 邪に犯され身體心に任せず、造立の事も怠りければ、本尊に快気を祈、其夜夢中に黄面の老僧金剛~を 従へ來て門海が病吾能治すべしと。金剛~に命じ、門師が肩を執て引立ること見へて夢さめ、風邪忽に去 て気力平日に倍し、障りなく落慶の壽を演られける。此事まのあたりの霊感此坂氷の人民悉く知る處也。


南石山常楽寺
 札所十一番、 南石山常楽寺の由来については、下の写真のような案内板があります。それには、 次のように記述されています。
市指定史跡 札所十一番
  南石山 常楽寺
 この札所は、江戸時代には観音堂、仁王門庫裡を備えた立派な寺でしたが、 明治十一年秩父大火で類焼し一切を烏有に帰しました。
 本尊は、十一面観世音で、ほかに釈迦如来もまつってあります。
 その昔、この寺の住持、門海上人は、仁王門建立を志し、多年勧化に 心をくだきましたが、普請なかばにして重い病となり、本願の達しがたい ことを憂い、本尊に快気を祈りしところ、ある夜黄面の老僧、金銅神を従いて あらわれ、「門海の病気吾能治すべし」といい、金銅神に上人が 肩を引き立てられるところにて夢さめ、たちまちに病い全快し、仁王門建立の 本願を遂げたという縁起があります。
 またこの寺は明治初年までは天台宗の寺でした。比叡中興の祖元三慈恵大師 をおまつりし、宗洞宗になっても一月三日には大勢の参詣で賑わっております。
 また四月二十日は本尊十一面観音の縁日と共に辰歳生、己歳生守護本尊の 普賢菩薩の縁日でこれまた賑わっています。
         昭和40年1月25日 秩父市教育委員会指定

常楽寺の由来


常楽寺の本堂


常楽寺の本堂の近接図


常楽寺の縁起図。住持門海 門海當山に仁王門を建立普請なかばにして邪気に犯され薬服もかなはず 本尊に祈念したれば
金剛神いでて門海の手を取り忽ち平癒し本尊の霊験を蒙り長寿を得たり。



 最終更新日時: 2011年8月27日 Copyright (c) 2011 Antillia.com ALL RIGHTS RESERVED.