右の図は、下記の資料より引用した秩父札所十二番佛道山野坂寺の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記」(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者名:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,服部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記」の下部の「霊場の縁起」については、次のような逸話が
記述されています。
甲斐の商人
徃昔、甲斐の國の商人某といふもの、この所を通路しける時、山賊ども五六人立出て着類を剥しうへ、
後の禍なからん為に引捕らへて切り殺さんとしけるゆへ、商人は迚も叶はぬ命と唯一信に南無観世音
と唱えしかば、肌の守のうちより光明電のごとく輝きければ、山賊ども眼を射られて開くことあたわず、
是によって立所に盗み取りたるものを返して侘言しければ、眼のひらきけるゆえ三四人は迯去りしが、
頭人は佛罰を恐れて、ただちに遯世して茲に住みけるうち、かの商人古郷より、聖徳太子の作り玉ふ
観音の像を持ち來れば、共に力を合せて当所に堂を建り。今の本尊は則これなり。
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