右の図は、下記の資料より引用した秩父札所十五番 母巣山 蔵福寺(少林寺)の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記」(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者名:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,服部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記」の下部の「霊場の縁起」については、次のような逸話が
記述されています。
湯尾峠の奇談
近江国堅田の商人、越前国へ行て湯尾峠を通りけるに、怪者十余人、たがいに物語りするを聞に、今年江州
の人種を尽さんと思ひしに、定朝めば十一面の像を作りて防ぎしゆへ、そのことならず、是より東国におもむかん
といへば、一人が言よう、若又その観音を東国に移さばいかがすべしといへば、その時は吾輩日本には住まわれず、
あないまいましき定朝がなと私語をかの商人聞、これこを疫神ならんと大いに恐れて、国へ皈りて、いそぎ定朝
にかくと告ければ、坂本の地にある尊像を商人に授けて、是を東国に持行て、諸人の疫難を救うべしとあれば、
急ぎ東国に持下りしに、當所佛意に叶ひし霊験あるによって、此地に安置せんことを願へば、領主より俄に
堂舎建立ありて、疫難もまぬかれ、永く尊き霊場とはなれり。
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