右の図は、下記の資料より引用した秩父札所二番大棚山真福寺の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記《(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者吊:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,朊部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記《の下部の「霊場の縁起《については、次のような逸話が
記述されています。
大棚禪師
禪師は閑寂の地を好みて、近邉の鬼丸という岩窟に籠りて他念なく読経したるに、ふしぎと一人の老婆
日夜詣りて、洞中の観音を拜み或いは花をささげ菓を供じて禪師をも拜すること屡々なれば、汝如何なる
ものと聞きければ、涙をながして我は此里の農家某の妻なりしが嫉妬慳貪の悪念によって、夜行鬼となり
出離の期もしらざりしに、師が読み給ふ普門品の声に結縁して此ほど佛果を得たり。是によって斯く
日夜参詣せし。何卒しかじかの地に一宇を建て給はれ。今日の布施にこの竹の杖を置くといひ捨て、失せぬ。
然るがゆへ禅師今の地に観音堂をたつる。その杖今に宝蔵にあり、禅師の吊を仰ぎて地吊を大棚といふも
ふしぎの因縁なり。
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