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札所3番 岩本山 常泉寺

所在地
住所:埼玉県秩父市山田1392

観音霊験記
 右の図は、下記の資料より引用した秩父札所三番岩本山常泉寺の霊験記の錦絵です。 上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記」(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
 著者名:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,服部応賀/編
 出版者:〔山田屋庄次郎〕
 出版年:江戸末期

 右の図の「観音霊験記」の下部の「霊場の縁起」については、次のような逸話が 記述されています。
子持石
不睡石長命水
當山の本尊ならびに十王の像は、行基の作にて誠にあらたなる霊験なり。境内にある不睡石に眼病を 祈ればかならず験あり。又長命水を服する者はいかなる難病も愈えるべしと、観世音の告によって 當寺の住持をはじめ諸人もその利益を蒙りたるもの少なからず。また子持石を嗣子なき者信心して祈 れば、福徳智慧ある善男子を授かることひとへに圓通大士の大慈大悲の本願、妙智力を仰ぎ尊むべし。


秩父三十四所觀音霊験圓通傳
 秩父札所の縁起については、江戸時代の延享元年(1744年)に発行された、沙門圓宗の「秩父三十四所観音霊験圓通傳」が 最も詳しい資料でしょう。慈眼寺から同書の復刻版 「秩父三十四所観音霊験円通伝」 (柴原保教 1976年) が発行されています。また、同書の翻刻版が「埼玉叢書 第三巻」(国書刊行会 昭和45年) と 「建部綾足全集 第6巻」(国書刊行会 昭和61年) にそれぞれ収録されています。 それには、常泉寺について、以下のような縁起が記されています(以下、翻刻版より一部抜粋、ひらがな表記に変更して引用)。
第三番 岩本山常泉寺(御堂三間四面東向)
本尊聖觀音 立像御長二尺六寸 行基菩薩御作
當寺の本尊は、舊此地より北の方、矢行地邑と云處に、暫く安置し奉りき。何れの世誰の開基と云事も 確かなる説なし。其地や懸岸絶壁、天の與ふる幽閉、地の授くる霊勝、朝日の瀑布、夕日の瀧、横瀧な ど云へる勝景 さながら一片の書圖の如し。俗境を離るゝ事數里、一度此地に遊歴すれば忽ち世縁の束 縛を解きて、頓に塵外の想を生す。此境の勝景道の記に詳なり今爰に畧。此地に本尊を安置し奉りし時、近きあたりに矢追邑と 云處あり。是當寺岩本寺の境地なり。徃古より此處に行基菩薩彫刻の十王の像を安置せり。今の札堂也。南の方二町許へだてゝ 一院あり、奥院と稱す。愛宕山大権現を勧請す。亦側に岩窟あり。洞中に地蔵菩薩を安置せり。霊泉あ り長命水と號す。また不睡石、子持石など云へる怪岩奇石あつて尋常ならぬ霊地なり。一日其姿凡人なら ず見へし巡禮の客、同行十人あまりにて此處に來て十王堂に通夜して、誦經の聲里人の心耳を清し、隋 喜せし折から、岩本の御堂の方より、數千の征矢を射るが如き光明輝き來て此地を照す。里人大に驚き 群集して此地を見るに、件の順禮もいづち行けん跡もなく、矢行地邑に安置し奉りし霊像厳然として坐 す。村老野翁大に驚き、矢行地邑の院主も來て、各相議して、彼地の御堂を引移して永く當所に安置し 奉る。矢行地矢追の地名も、此時より起れりと、此地の古老の傳へ云處、年暦いまだ詳ならず。境内の 霊石不睡石は、眼病を祈るに必ず験あり。亦此石に向て祈れば、能く眠を除く、故に不睡の名あり。子 持石と云は、嗣子なき人祈れば、其應ありて福徳智慧の子を生ず。是併圓通大士大悲心中の實際より流 出する處、凡人の得て思議すべからざる所なり。又長命水と號する泉は、當院の住侶難治の症を憂しと き、本尊の告に依て庭前の泉を以て湯薬を調へ、服して其病頓に瘉たり。是より以來里人必ず此水にて 薬を服すに、治せずと云事なし。依之長寿の名あり。


岩本山常泉寺
 札所三番、 岩本山常泉寺の由来については、境内に下の写真のような案内板があります。それには、 次のように記述されています。
 市指定史跡 札所三番
  岩本山 常泉寺
 この札所は、三間四面、表に一間の大唐破風の向拝をふし、建築彫刻 として繊細を極めています。特に竜の彫刻をほどこした向拝の海老虹梁 のかごぼりの細工は実に見事です。
 彫士は熊谷近くの玉井の住人飯田和泉と云われているもので明治三年、 秩父神社の薬師堂を移築したもので江戸後期の建築物であります。 本尊は聖観世音菩薩立像一木造り、像高九七、三糎、室町時代の作です。 札所の周囲には長命水の井戸、眼病を祈る不睡の石、子持ち石などの 伝説を持っております。
 その昔、この堂より北の矢行地に本尊が安置され、今の札堂の地に 行基菩薩彫刻の十王像が安置されていたと云う。 巡礼客十人あまりこの十王堂に宿り誦経し、その声は里人の心を 打ち非常に喜ばれたと云う、折しも近くにある矢追の地より数千 の征矢を射る如く光明が輝きこの地を照らし里人は驚いて十王堂に 集まり例の巡礼者をみると、いづこへか消えて矢行地にあるべき霊像 が厳然と座している姿に驚き里人は矢行地の堂を矢追に移し永く当所 に安置したと云う縁起があります。 この縁起は当地の名主堀内家が常泉寺を建て、札所を移したことを 物語っております。
  昭和40年1月25日 秩父市教育委員会指定

常泉寺の由来


常泉寺の本堂。


常泉寺の本堂の近接図。


常泉寺の子持石。


常泉寺のなでぼとけ。


常泉寺の蓮池。


常泉寺の文殊堂。


常泉寺の観音堂。


常泉寺の観音堂の近接図。


常泉寺の観音堂の縁起図。本尊 聖観世音像は行基の彫刻と伝えられ、長命水子持石不睡石の伝説が残っている。


常泉寺の観音堂の全景。


常泉寺の六地蔵。


常泉寺の石仏。


常泉寺の不睡石。眼病平癒を祈願すれば効能があるという伝説の石。


常泉寺の長命水。


 最終更新日時: 2011年8月22日 Copyright (c) 2011 Antillia.com ALL RIGHTS RESERVED.