右の図は、下記の資料より引用した秩父札所三十二番番 般若 石船山(般若山) 法性寺の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記《(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者吊:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,朊部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記《の下部の「霊場の縁起《については、次のような逸話が
記述されています。
豊嶋權守の娘
當国豊島郡の住人、豊島権守一人の娘を同郡某に嫁せしに、或時彼娘父が里におもむかんとて船に乗りけるが、
犀ヶ渕にて悪魚に見込れて、終に水底に飛び入りしが、一人の美女ふしぎにも其娘を助けて、舟に乗せて
送りければ、従者ども夢の如くによろこびて、何れの者と聞きければ、吾は石船山の者なり。娘が父をはじめ
主従よく観音を信ずるがゆへ危難を助けたりと言つゝ失ぬ。このふしぎを権守に告しかば、随喜の涙を
ながして利益を尊び、其の恩謝として諸所を順礼して當山に来りて、御帳をかかげて拜すればふしぎや、娘の
冠りたる笠を着玉ひて、れいれいと立たせ給へば、感涙を尽くして三日三夜に、般若心経を書写して供養をし
奉りしとぞ。誠に或漂流巨海 龍魚諸鬼難 念彼観音力 波浪上能没の経文有がたきかな。今も本尊は天冠
のうへに、笠を着て舟に棹さし給ふ尊像なり。
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