右の図は、下記の資料より引用した秩父札所六番 荻の堂 向陽山 卜雲寺の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記《(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者吊:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,朊部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記《の下部の「霊場の縁起《については、次のような逸話が
記述されています。
禪客
當山の本尊は行基の作にて、徃昔、纔の草庵に安置しけるが、山聳え谷深きがゆへ、鳥獣の外
は春秋の彼岸にも、来る者もなかりしが、爰に一人の禪客ありて、六年が間草庵に禅定して、有無の工夫
をいたしける処、ある日誰とも知らず、一首の和歌を詠ず。その歌に
はつ秋に風吹きむすぶ荻の堂
宿仮り世の夢ぞ覚める
禪客この一首を聞いて、忽ち多年工夫せし無常迅速の理をさとり、その声の処を尋ね見れば、一株の荻の
下に、その詠歌の短冊あるによって、これぞ誠に観音の霊感ならんと、そこに小堂を営むがゆへ荻の
堂といへり。後の人種々の霊験を蒙りたるがゆへ、今の堂舎を建立して繁盛の地とはなれり。
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