右の図は、下記の資料より引用した秩父札所九番明星山明智寺の霊験記の錦絵です。
上部には霊場境内の風景画が描かれ、下部には霊場の縁起にまつわる逸話と挿絵が描かれています。
「観音霊験記《(埼玉県立浦和図書館所蔵資料)
著者吊:歌川広重(二代)、歌川国貞/画,朊部応賀/編
出版者:〔山田屋庄次郎〕
出版年:江戸末期
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右の図の「観音霊験記《の下部の「霊場の縁起《については、次のような逸話が
記述されています。
横瀬の兵衛
天正の頃、横瀬の里に兵衛という稚者あり。家貧しきなかに、盲の母一人をもち、養うべき業もなくて、
此寺の林に来て、菓を拾ひて糧とせしに、一日兵衛が菓を拾ひ居たる所へ老僧きたりて、母の病ひを
愈さんと思わば、此妙文を唱へさせよ。則ち無垢清浄光恵日破諸闇の二句を授けければ、兵衛ありがたく
思ひて、その文を母に教へて、その日この観音堂に通夜をいたしけるに、暁にいたりて内陣より明々たる
星とび出て、母の頂を照すがいなや、眼たちどころにひらき、母子とも驚きかつ喜びて、本尊を厚く
拜みつゝ皈るがはやく、このこと諸人にしれ、領主より兵衛が孝心を感じて、田畠を賜わり、また此本尊
の利益を末世にしらしめんと。其時より明星山と吊づけられたるは、上思議の霊験なり。
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